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ダライ・ラマの使節団 中国との対話を希望

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(2002年9月29日 ニューヨークタイムズ)

(北京)ダライ・ラマの使節団は、北京、上海、そしてチベットを訪問し、各地域の複数の上級高官との会談を終えた週末、中国政府と亡命中のチベットの精神的指導者との新しい対話が開かれるとの希望を慎重な様子で明らかにした。 9月28日、使節員であるロディ・ギャルツェン・ギャリ氏は、インドにあるチベット亡命政権で発表した声明の中で「我々は、両国の関係における新しい幕開けを実現するための基礎作りのために、あらゆる努力を行ってきた」と述べ、「我々は、両国の新しい関係がたった一度の訪問で生まれるとは当然思ってはいない」と付け加えた。 ワシントンにおいてダライ・ラマの名代を務めるギャリ氏は、チベット亡命政権の指導者たちが、1985年以来の初めてのチベット公式訪問と呼ぶ小規模の使節団の団長の役割を果たした。

チベットの精神的指導者であるダライ・ラマは、1951年にヒマラヤ地域を占領した中国軍に対抗する蜂起に失敗した後、1959年に母国を脱出し、インド北部の都市であるダラムサラに亡命政府を樹立した。中国政府は、今回ギャリ氏ともう1人の使節員であるケルサン・ギャルツェン、および2人の随行員の18日間の訪中を認めたことで、チベットの中国からの独立を推進する敵として繰り返し非難してきたダライ・ラマとの間接的な対話を持つ、今までにない積極的な意志を示したことになる。しかし、チベット亡命政権の指導者たちが今回の訪中を公式であると位置付けたのに対し、中国政府は、他国への移民者が中国の支配下におかれている自分の故郷での経済的発展を視察するための個人的な旅行であるという、苦しい言い訳をしている。ダラムサラでは、亡命政府内閣の主席大臣サムドン・リンポチェ教授が議員に対し、「会談は複数の外交官と行われた」と説明したが、「僻地であり信仰の厚い人々が暮らす山岳地帯の自治権を拡大することに関して真剣な話し合いが持たれることになるかは明らかではない」と述べた。

使節団は9月9日に北京に到着し、上海、成都、そして、チベット内のラサ、日喀則(シガツェ)、およびニンティを訪問した。専門家によると、ダライ・ラマの兄を含むその他の使節員は、長年にわたって北京を訪問し機密会談を行ってきたが、今回の亡命チベット政権の官僚による訪中では、1985年以来、初めてのチベット公式訪問、および、チベットの首都、ラサへの1980年以降の初めての公式訪問が実現されたことになるという。 ラサでは、中国がチベット自治区と呼ぶ地域のチベット人の最高官たちとの会談が持たれた。このような高官には、地域行政議長でありチベット共産党事務次官を務めるレグチョク氏、および、地域議会議長でありチベット共産党事務次官でもあるライディ氏が含まれていた。使節団は、最高官を務める中国人の党書記とは会談しなかった。

ギャリ氏はその声明の中で、ラサでもっとも神聖とされる2つの地名を指し、次のように述べている。
「我々は、ジョカンとポタラで祈りを捧げることができたが、これは非常に感動的な経験であった。」
ギャリ氏はさらに次のような声明を続けたが、その中では中国政府に対する気遣いがうかがわれた。
「チベットの経済開発のために中国当局が実施する特別な政策と権限の行使に感銘を受けたが、使節団は、チベット独自の文化、信仰、および言語の遺産を保存することにも同様の関心を払うことも重要であることに、彼ら(中国高官たち)の目を向けさせることができた。」
ギャリ氏は、今回の訪中は中国当局によって周到に計画、管理され、「一般のチベット人と会話を交わす機会はほとんどなかった」と、付け加えた。

中国政府の最高官を務めるチベット人のレグチョク氏は、使節団との話し合いを終え、次のように語った。
「私は、親戚を訪ねてきた2人のチベット同朋と会ったが、彼らがダライ・ラマの私設代表なのかは分からないし、彼ら自身もダライ・ラマの代表として来たとは言っていなかった。」
昨年、中国政府はチベットに対し、以前とは異なる意図を持って接するようになり、教育と経済を改善するための多額の資金を投入し、信仰の自由に対する規制を緩和することを約束した。しかし、中国政府は、チベット仏教の精神的指導者であるダライ・ラマを公に崇拝することを禁止し、法王がチベットの独立を企てているとして非難している。

67歳になるダライ・ラマは、チベットの「真の自治」を目的とした対話を開催する希望を表明しているが、中国高官は、独立のための見せ掛けの計画であるとしている。チベット問題の 専門家は、今回の訪中ではなんの打開策も見出されず、その主な目的は、今年の秋に開かれるブッシュ大統領との首脳会談の前に中国のイメージを良くすることではないかという 懸念を示している。